第一章 とりあえず、彼女との関係を語っとこう

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「意外と、そういうのに興味がおありなんですね」  隣を向くと、枠森葵が立っていた。内心驚いた綺嶋だが、すぐに平静を装って、無言で本に目を移す。 「実は私もです」  そこで会話が途切れ、二人とも本を黙読する。  綺嶋が本を置き、次の本に手を伸ばすと……、誰かと手が触れ合った。綺嶋はびっくりして手を引っ込めた。 「恋愛テクニック二十三です」  隣を向くと、彼女は本のページを開いていた。そこには、異性といかにして手を触れるかについての諸技法がこんこんと語られていた。 4  零れ落ちそうな空の下で、現在の物語が続いていた。 綺嶋は泣きながら、枠森に触れている。愛おしそうに、愛おしそうに、何度も何度も。月の光に、朱の色が混じる。 綺嶋の手に握られているのはナイフ。それを何度も何度も突きたて、突きたて。そして止める。脈拍がないのを確認し、綺嶋は泣きやむと、彼女を引きずり始めた。 そして、ある地点で立ち止まると、シャベルでそこを掘り始めた。  一心不乱に掘って、掘って、掘って。やがてねちゃっ、という音が鳴り、そこからは慎重に土を丁寧に取り除き始める。  約二メートルくらいの所に、顔が現れる。それは、今綺嶋の手にかけられた枠森葵のものと同一の顔だった。     
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