1章 出会い

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「いいから、来て」 そう言って私を引っ張る。 「早くこい」 あんた、二重人格者ね。さっきの爽やかフェイスのときとは違い、私にだけ聞こえるように声を低くする。 皆の視線に晒され、限界だった私は、 「だから、話すことはないから!」 と、振りほどいて逃げた。 昨日の一件もあり、昼食場所に迷ったが、教室よりましだと思って屋上へ向かった。 「お・ま・え・なー!」 屋上へのドアを開けてそうそう、桐ケ谷湊の怒声が聞こえてきた。 「あー、ごめん。でも話すことほんとになかったし......」 「はぁ、もーいーや。めんどくさいし、お前はべらべら話しそうにないし」 なにかを諦めたようだ。 「まー、一件落着ってことで、昼御飯の邪魔しないでね」 「こっちのセリフだ!元はと言えば、お前のせいだぞ」 聞き流そう。 そう決めて、お弁当に集中する。 「そういえばあんた、二重人格だね」 ごほっ、ごほっ さっき思ったことをそのまま口に出すと、桐ケ谷湊が咳き込んだ。 「き、急に、何言い出すんだよ!」 「だってさ、教室に来たときはニコニコしてたのに、私に話しかけていたとき『早くこい』だよ?」     
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