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「いいから、来て」
そう言って私を引っ張る。
「早くこい」
あんた、二重人格者ね。さっきの爽やかフェイスのときとは違い、私にだけ聞こえるように声を低くする。
皆の視線に晒され、限界だった私は、
「だから、話すことはないから!」
と、振りほどいて逃げた。
昨日の一件もあり、昼食場所に迷ったが、教室よりましだと思って屋上へ向かった。
「お・ま・え・なー!」
屋上へのドアを開けてそうそう、桐ケ谷湊の怒声が聞こえてきた。
「あー、ごめん。でも話すことほんとになかったし......」
「はぁ、もーいーや。めんどくさいし、お前はべらべら話しそうにないし」
なにかを諦めたようだ。
「まー、一件落着ってことで、昼御飯の邪魔しないでね」
「こっちのセリフだ!元はと言えば、お前のせいだぞ」
聞き流そう。
そう決めて、お弁当に集中する。
「そういえばあんた、二重人格だね」
ごほっ、ごほっ
さっき思ったことをそのまま口に出すと、桐ケ谷湊が咳き込んだ。
「き、急に、何言い出すんだよ!」
「だってさ、教室に来たときはニコニコしてたのに、私に話しかけていたとき『早くこい』だよ?」
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