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ふっとマルミの半透明の光像が消えた。あとには微細なホタルのような光の粒子がブラウン運動を起こしている。
オモイが静かにいう。
「残り10分を切りました。ここからは秒数のカウントダウンを始めます。作戦開始597秒前、
596…595…594」
タツオはジャクヤとクニに告げた。
「さあ、ぼくたちも地上に戻ろう。各自雲山改の速度をあわせるんだ。すこしでもずれたら、マルミちゃんのミサイルの直撃をくらうことになる」
緩衝地帯を突破する速度は時速35キロと決められていた。平地なら4足歩行の雲山改は脚部先端にあるローラーで最大戦速58キロまで可能だが、ここはジャングルを切り開いてつくられた地雷と自動砲台だらけの無人緩衝地帯だった。全速力は望むべくもない。
「はいはい、指揮官。行進訓練みたいに正確にいきますよ。じゃあ、作戦終了後に」
クニが夜空に消えて、光の粒を残した。
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