S#2 「ツヨっさん」… 垣谷 剛志

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この頃の俺達は、相手を自分より強いか弱いかで判断していた。野生動物と一緒だ。 それに、背が高く どこか大人びた空気をまとっていたツヨっさんには、六年生でさえ正面からはケンカを売らなかった。 そこに自分より遥かに小さい俺が向かっていき、互角の戦いをしたもんだから、ツヨッさんは一目置いてくれたようだった。 「でも、あれはねぇっちゃ」 「やっぱり?」 俺達は大笑いした。あの時の自分達の姿を思い出せば、笑うなという方が無理な話だ。 そしてこの日、俺達は初めて一緒に帰った。 だが、ツヨっさんの歩き方が何処かぎこちない……。 チビな俺に合わせて、歩幅を小さくしてくれていたのだ。 俺も少しだけ歩幅を大きくしてみた。 少しの大股歩きと、少しの小股歩き……。 後に癖になるこの歩き方が、お気に入りの靴を初めて履いた日の様に 何だかとても 嬉しかった。
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