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波がこちらに押し寄せてくるのが見える。
車は防波堤の前に停めてきた。
まだ仕事中だが、ちょっと小休止。
「コーヒーどっち飲む?」
誠一にそう声をかける。
「え?ああ、カフェオレの方がいいな」
「はい」
カフェオレの缶コーヒーを渡す。
「ありがとう」
私も残ったキリマンジャロの缶コーヒーを開けて飲む。
と、誠一が自分が着ているコートを私の体に被せてきた。
「ありがとう」
私がそう言って微笑むと、誠一も微笑んだ。
秋の始めの季節で、少し海風が冷たかった。
誠一は会社の同僚で、今日は一緒に営業回りだった。
いつも誠一と組めるわけじゃないので嬉しい。
正直、今日はこのまま二人だけで、会社へ戻らずに、ここに居たかった。
誠一は私の気持ちに気がついているのだろうか?
それはわからない。
でもはっきりしていることがある。
誠一には彼女がいる。
それもお互い愛し合っている彼女がいるのだ。
誠一が彼女と二人でいるところを何度か見たことがあるが、明らかに愛し合っているのがはっきりとわかった。
少なくとも、誠一は彼女のことを心から愛しているのがよくわかった。
そしてその彼女は、私の親友である真由美なのだ。
つまり親友の彼氏が誠一である。
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