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でも夜中の間、ずっと流れ続けた涙は、何一つ洗い流してはくれなかった。 私は誠一が好きなままだった。 親友の真由美という恋人がいるのに、それでも誠一が好きだった。 だが、誠一が私を「見ていない」ことは知っている。 誠一は真由美しか見ていなかった。 その優しげな微笑みは、全て真由美に向けられたものなのだ。 誘惑したかった。 二人きりで海に来ているのに、死ぬほど好きなひとと、こんな場所で二人きりでいるのに… これまで何度、仕事で二人きりだったのに何も出来なくて、後でどれほど狂おしいほどに後悔し続けたことか。 あんな思いをするくらいなら、今すぐ誠一の手を握りたい。 私のことなど全く見ていないひとに、こんなことを思い続けてるなんて、私は明らかにおかしい。 でもさっき自分が着ていたコートを、私の体にかけてくれて、誠一が微笑んだ時、そのまま手を握り、キスしたくてたまらなくなった自分が怖かった。 親友の、大好きな真由美の彼氏なのに。 誠一は真由美のことしか見ていないのに。 それを全て壊そうとしたら、壊れるのは、ただ私一人だけなのに… 目の前の波が、呼吸困難になりそうな私の緊縮した気持ちを少し和らげてくれる。 でも波のしぶきが、全て私の涙に見えた。 ひどく悲しかった。 目をつむって、波の音だけを聞いた。     
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