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悠一は就職が決まって、喜び勇んで私に報告し、結婚の話も前より頻繁にするようになったが、でも私は、悠一が夢を捨ててしまった姿を見ていられなかった。 悠一は、きっと結婚という現実を見て決断したのだろうが、私は毎日ギターを弾いては売れもしない曲を作り、曲が出来ると真っ先に私に聞かせてくれ、ロクに客もいないライブハウスや路上で、生き生きとした歓喜の笑顔で、ギターを弾き、歌いまくっている悠一が大好きだったのだ。 悠一の目や、その姿から、輝きが消えてしまったのを見ていられなかった。 それも私との現実的生活の為に、彼の夢を犠牲にするなんて…そんな酷いことは出来なかった。 私は何度も、またミュージシャンを目指せばいい、私とのことで夢を諦めないでくれ、と悠一に言った。 でも。 「どうせバンドなんかやってたって先が見えてるし、オレに才能なんかないんだよ。もう大人になんなきゃさ」 と私に言った。 悠一から体温がまるで感じられなくなってしまった。 悠一の言ってることの方が、世間ではまともな大人の対応だと言われることはわかっていたけど、なんというか、もうこの人と一緒にいなきゃいけない必然性は何もないという実感を、私はどうしても消すことが出来なかった。 しばらくして、私は、悠一に連絡先も告げずに引っ越し、音信不通にしてしまった。     
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