雪起こし

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職場のみんなには付き合っていることは内緒にしようと言い出したのは、朔夜の方だった。冷やかされると照れるし、私を贔屓していると思われるのは心外だからという理由に私も納得した。 研修の時から仲の良い美沙貴にだけは打ち明けたけど、他の人には気付かれないように振る舞っていたつもりだった。 そんな私たちの仲を見破ったのは、意外にも高遠くんだった。 その前日、休みを合わせて取った朔夜と私は、笠井公園の湖の周りをゆっくり歩いていた。 とても寒い日で、肩を寄せ合い手を繋いで歩いても不自然じゃないねと彼が笑った。 歩いている途中で雪が降ってきて、朔夜は慌てて私をアパートまで送ってくれたけど、私にとっては雪の中、2人で歩いたことがロマンティックな思い出になった。 そしてその夜、私たちは初めて結ばれたのだった。 翌日、私はいつも通りバスで通勤し、私のアパートに泊まった朔夜もいつも通り車で通勤した。いつも通り、ただの先輩と後輩のように接していた……つもりだった。 でも、高遠くんには違って見えたらしい。 「ふーん。あんた、木原さんといい仲になったんだ?」 休憩室でいきなり図星を指されて、真っ赤になった私。これじゃあ肯定したようなものだと思うのに、顔の熱は引いてはくれなかった。 その場にいた朔夜もギクッとしたように固まり、そんな私たちを見てバイトの子たちが、 「えー?! そうなんですかー?」 と騒いだ。その中にはたぶん朔夜を好きな子もいたんだと思う。 高遠くんほどではないけど、朔夜も結構モテたから。 どうしてバレたんだろう? やっぱり私の様子が変だった? だって初めてだったんだから仕方ない。まだ痛みは残っているし、恥ずかしくて朔夜の顔をまともに見られないし。 私はてっきり自分のせいでバレたと思ったのに、高遠くんは朔夜のせいだと言った。 「木原さんが久保さんにくっつき過ぎだから。身体を重ねた関係だってバレバレですよ。」 高遠くんのセリフに女の子たちはヤダー!と叫び、私はますます赤くなって、朔夜はまいったなと呟いた。 結果的には、高遠くんのこの爆弾発言のおかげで、朔夜と私は公認の仲となり、朔夜にアプローチする子はいなくなったんだけど。
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