ユキとヨル

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一年中雪がやまない街に、ユキとヨルという双子がいた。 その双子は、街でも有名な双子だった。 学校に行くのも、お風呂に入るのも、寝るのも、常に一緒だった。 街は、農作物が育たず、年中豊かとは言えなかった。 そんなある日の夜中、ユキとヨルの両親は大げんかをしてしまった。 「もういい、出て行くわ。」 お母さんはそれだけ言うと、寝ているユキを抱えた。 「待って。僕も連れってって...。」 ヨルの声も聞かずに、そそくさとまだ寝ているユキと、街を出て行ってしまった。 その日から、街には雪が降らなくなった。 街の人は、これで生活しやすくなる、と大喜びをした。 それも束の間、街の夜はその日から明けなくなってしまった。 ユキを失ったヨルは、毎日泣き続けた。 ご飯も食べず、安心して寝ることも出来なくなってしまった。 街の人は、なんとかしてヨルを元気付けようと試みた。 そしていつしか、ヨルはユキがいない日常に慣れ、街の夜も明けていた。 雪が溶けると同時に、街の人も、ヨルでさえも、ユキの存在を忘れてしまった。 最初から、ヨルは一人っ子だったんだと思い込むようになっていた。 幼かったヨルも、いつしか20歳を迎えた。 その日は、珍しく大雪の予報だった。 ヨルはお父さんに雪が降るから家に居なさいと、強く言われていた。 ひどく寒い夜。 まるで星屑が夜空からこぼれ落ちるかのように、雪がサラサラと降り始めた。 ヨルは家の窓から、その雪を一目見ようと、身を乗り出した。 「綺麗。」 雪に見とれていたヨルは、いつしか無意識に泣いていた。 雪の綺麗さに感動しているのか、寒さが辛くて泣いているのか、自分にもわからなかった。 その時だった。 この雪の中、ヨルの家の下で立ち止まる青少年がこちらを見上げて言った。 「…ヨル?」
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