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ふと、音がほぼ無いことに気づいた。
確かに集中はしていた。
もうすぐ試験があるから、苦手な英語をこれでも必死にやってた。はず。
でも、いつも何となく聞いているような車の音や、ヒールの音、風の音が聞こえてこない。
「…なんだろうこれ」
じっと耳をすましてみてもやっぱり何にも聞こえない。
思い切って、カーテンを勢いよく開けてみた。
そしてそこには…。
一面真っ白な、想像もしていなかった世界が広がっていた。
「雪なんて言ってたっけ…?」
窓を開けてみると、外の冷気が頬に突き刺さる。寒いけど、なんだかワクワクもする。手を伸ばして、空から落ちてくる雪を触ってみた。冷たいけど、もっと捕まえたいような。
服の袖についた雪を見ると、結晶がよく見える。でもすぐに溶けてしまって、もっと見たい欲にかられて腕をまた伸ばす。
「雪の結晶って、端から順番に溶けていくんだなぁ…」
じっと溶けていくさまを見ていたけれど、さすがに体が冷えてきた。明日の朝はさすがに止んでるかな、これ。
戸を閉めようとした時、何か音がした気がしてキョロキョロと辺りを見回してみる。
雪の精でもいたかな?なんて思いながらゆっくりと窓をしめる。
「また明日会えたらいいな、雪の結晶に…」
背後でキラキラと雪の結晶が返事をしているかのように、こっそりと輝いていた事には全く気づかないまま、僕はまた英語の勉強を始めた。
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