1

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
ふと、音がほぼ無いことに気づいた。 確かに集中はしていた。 もうすぐ試験があるから、苦手な英語をこれでも必死にやってた。はず。 でも、いつも何となく聞いているような車の音や、ヒールの音、風の音が聞こえてこない。 「…なんだろうこれ」 じっと耳をすましてみてもやっぱり何にも聞こえない。 思い切って、カーテンを勢いよく開けてみた。 そしてそこには…。 一面真っ白な、想像もしていなかった世界が広がっていた。 「雪なんて言ってたっけ…?」 窓を開けてみると、外の冷気が頬に突き刺さる。寒いけど、なんだかワクワクもする。手を伸ばして、空から落ちてくる雪を触ってみた。冷たいけど、もっと捕まえたいような。 服の袖についた雪を見ると、結晶がよく見える。でもすぐに溶けてしまって、もっと見たい欲にかられて腕をまた伸ばす。 「雪の結晶って、端から順番に溶けていくんだなぁ…」 じっと溶けていくさまを見ていたけれど、さすがに体が冷えてきた。明日の朝はさすがに止んでるかな、これ。 戸を閉めようとした時、何か音がした気がしてキョロキョロと辺りを見回してみる。 雪の精でもいたかな?なんて思いながらゆっくりと窓をしめる。 「また明日会えたらいいな、雪の結晶に…」 背後でキラキラと雪の結晶が返事をしているかのように、こっそりと輝いていた事には全く気づかないまま、僕はまた英語の勉強を始めた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!