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「まだこんな旧型をお傍に置いているなんて、何を考えていらっしゃるんですか!?」
乱暴に扉が開け放たれたと認識すると同時、或いは其れより早く、諸々の機能が悲鳴を上げる様な、空気さえ震わせる様な怒声が、決して狭くはない部屋中に響き渡った。
人間誰しも静かな空間から急に騒がしい場所に放り込まれた場合、其の雑音は普段以上に堪えるものである。無論、静かな空間に騒音の方から来た場合もしかり。加えて騒がしさを嫌い、静かな時間を好んでいる青年にとっては尚更で、彼は僅かも繕う様子は見せず、露骨に顔を顰めた。
どんなに鈍い人間、気楽な人間であっても彼の其の表情から心情を読み取るのは容易だろう。否、彼の心情を無視して己の主張を先と変わらぬ声量で通し続ける事は困難だろう、と言うべきか。
つまりは其れ程分かり易く、彼は言外に不機嫌を訴えていた。乱暴に言ってしまえば、「煩い、黙れ」といったところだろう。
突然の大声に不快感を抱いたのは青年だけではなく、先述の通り諸々の機能が悲鳴を上げたかと言わんばかりの衝撃に見舞われている響とて同様なのだが、まあ乱入者が響に気遣う事などないだろう。
寧ろ乱入者達にとっては響の所為で、不愉快此処に極まり、なのだから。
「こんな旧型、ねぇ。お前等、響を作ったのもオレだって事を忘れてねぇ?」
青年は、やさしい。やさしいが、穏やかな時間を、己が嫌う騒がしさで潰された挙句、己の生み出したアンドロイドを貶されても尚、平然としている人種ではない。
そもそも彼に言わせれば、そうした人間は「やさしい」のではなく「愚か」で、アンドロイドの作り手として愛も、何もかも足りていない、という事になるのだが。
つまり響の贔屓目や自己愛ではなく、ただの事実として。
アンドロイドへの愛も、何もかも足りているどころか溢れ返らんばかりの勢いを見せている青年は、言外に不機嫌を訴えるだけに留まらず、明らかに相手を責める声音で反論を開始した。
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