旧型アンドロイドと天才青年

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 青年の最初の剣幕ですっかり気圧されてしまったのだろう乱入者は、其れ以上の反論も出来ず、ただ小さくなってコソコソと部屋を後にした。 「あー、くそ。イライラするな」  来た時とは正反対に、僅かな音さえ立てぬ様、用心に用心を重ねて閉じられた扉を睨みつつ青年は吐き捨てる。とは言え()の声音から大分怒りの色は消えている為、直ぐに直ぐ対応しなければいけない問題でもないだろう。  (ひびき)は青年の体調が少しの興奮状態に留まっている事に安堵しつつ、ぼんやりと先の言葉を再生せずにはいられなかった。  今日アンドロイドの進化は停滞を知らない。  日に日に進化を続け、人間の生活はどんどん便利になっている、らしい。響は其れを自身の目で見たワケではなく、先程の様に政府関係者や研究者達が青年の下に突撃する際、“有効な武器”と盲信して口にする言葉から推測しているだけだが、最も遅れているとさえ言われていた介護問題の機械化も介護に特化したアンドロイドを導入する事で嘘の様に躍進(やくしん)、今では最先端にさえ届こうとしているらしい。  そうした現状から考えれば、たとえ天才青年が0から100までを手掛けたアンドロイドであったにせよ、響を「時代遅れの旧型」と扱う事はあまり問題ない様にも、思える。     
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