1.受験の足音

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「え……別れたって、いつ?」 「先週」  いち早く衝撃的な告白から立ち直ったのは橙子だ。握りしめていたノートをすかさずしまって身を乗り出す。 「でも、あんなべったりだったのに?どっちから?」  ミルクティーアッシュの毛先が汚れたテーブルに擦れるのも全く気にしていない様子だ。無理もない。美鈴と彼は校内でも有名な二人で、付き合いだって長い。一年生のはじめの頃には付き合いだしていたようだったから、もう二年近く経っていたのではないだろうか。 「うーん……。なんだろ……、うーん……わかんない」  珍しい。彼女は頭の回転が非常に速く、くだらないおしゃべりの合間でも言葉に詰まることは滅多にない。 「そっかー。なんか、何となくだけど、二人はずっと一緒にいるのかと思ってた」  橙子がさみしそうに笑った。美鈴は唇を尖らせると、ずるずると音を立ててコーラを飲み干す。 「私だってそうだけどさ-、まあそういうもんなんだろね」  ぽん、と軽い音を立てた紙コップを眺めて、瑠璃は黙っていた。コップの表面に結露した水滴が飛び散る。リップクリームの色が移って、ストローの先が淡いコーラルピンクに濡れていた。
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