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「美鈴は推薦狙いだっけ」
「そう。どう考えても久我君とは離れちゃうしそれならさっさと受験終わらせたいって」
「美鈴らしいわ」
「ねー」
美鈴はオブラートに包まずはっきり物を言う。それ故反感を買うこともあるようだが、全く気にせず我が道を行くのが格好良いと密かに瑠璃は思っている。そして、そんな美鈴を唯一振り回すことが出来るのが久我で、ごくたまに見せる女の子らしい表情が彼女の魅力でもあった。
「本当に別れちゃったのかな……」
「なんか、未だに信じらんない」
美男美女ということを差し引いても、彼らは特別だったのだ。二人の間には見ているだけでこちらまであたたかい気持ちになる不思議な空気が流れていた。
「今度聞いてみるか」
じっと思案している様子の橙子が急に拳を握りしめた
「え?」
「久我君。直接確かめよう」
「え、本気?」
「うん。気になるし」
「意外……橙子って他人のそういうことに首突っ込みたくないタイプだと思ってた」
「まあね。でも瑠璃だって気になるでしょ。気になって勉強も進まないでしょ」
「そりゃ気になるけど……そんなこと聞けるほど仲良くないしなあ」
「平気平気。私去年玉城君とは委員会で一緒だったから。普通に友達」
「そうなの?」
「うん。あの二人基本セットで行動してるからいけるでしょ」
積み上げた参考書を前にして、余計なお世話でしかない決意は単なる現実逃避だったのかもしれない。
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