序章:過去の物語が今。

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ヒュウ… 足元から強い風が吹いた。 男女は、驚いて足元を見る。 散り始めている桜の花びらが、風に乗って舞い上がる。 「なんだか気味が悪いな…」 「…なんですかね、肌寒さも感じます…きゃっ!」 突然、つむじ風が女を巻き上げ男から強引に引きはがされた。 「なんだ!?」 女はつむじ風に捕まったまま、苦しそうに呻くも身動きが取れず宙に浮いたままだ。 男は目の前で起きた出来事に驚いていたが、 怯えた様子はなく女をどうしたら助けられるか脳内で議論が交わされている。 『…ねぇ、この女と私どっちが綺麗…?』 つむじ風から、か細い女の声が聞こえた。 「…え?」 『なんでこの女と一緒にいて、私とは一緒にいてくれないの?』 つむじ風の中で苦しそうにしている女とは明らかに違う声色が聞こえ、 どういうことかと男は、理解に苦しんでいるようだ。 『お前は、私とは一緒にいたくないの?』 「ま、待ってくれ。すまぬ、俺には訳が分からない。俺が悪いならなんでも罰を受けるから、 その女を下ろしてはくれぬか。」 なんでもするから…と男は土下座をする。 額を地面に擦りつけ、どうか、どうか…と正体がわからないものに懇願する。 『…私は、そんなことしてほしくはないんだよ…』     
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