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「俺の命がほしいのかい?」
『命?お前の心がほしい。命なんて終わってしまうものはいらない。命なら…』
つむじ風は、女の首を絞めつけたようで「うぅ‥」と苦しむ声が漏れる。
男は慌てて、つむじ風に寄り静止を呼びかけた。
「やめてくれ!」
『お前の心を掴んで離さないこいつの命を奪いたい。
お前が私とともにくるのならこいつの命を助けよう。』
さっきまで幸せだったのに。
桜の花は、いい話も悪い話も聞いたことがあるが‥
「今宵は悪い桜だったようだなぁ…。なぁ、お前さんの姿見せておくれよ。」
『私の姿かい?…姿を見せたら私とともに来るか?』
「お前さんが何かを知りたい」
真剣な表情で男は言う。
つむじ風は、次第に小さくなり捕えていた女も徐々に地面へと近づく。
あと少しで助けられる。
男は期待と焦りで鼓動が速く脈打つのを感じていた。
早く抱きしめてやりたい。助け出してやりたい。
瞬間、強い突風が吹き男の視界を桜の花びらが遮る。
「うわっ‥‥!」
辺りが静かになり、そっと目を開けると目の前には、
女を横抱きした成人女性が立っていた。
黒く長い髪は艶やかに光り、しっかりとした着物を身に纏っている。
男は、思わず見惚れたがすぐに意識を戻し、現れた女に近づく。
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