2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
山波健二は東京駅の9番ホームに立っていた。
郷里の松江に帰るために、サンライズ出雲に乗るためだ。
サンライズ出雲とは東京と出雲市を結ぶ寝台特急電車だ。7両編成でそのほとんどが個室寝台になっている。1両だけ寝台料金のいらないノビノビ座席というのがある、仕切りのないごろ寝するタイプの車両だ。
健二はいたって普通の会社員だ、三流大学をでて三流企業に就職し平凡な人生を送っている。
今度の帰郷も両親に見合いを進められ断ることができず、しかたなくうけたものだ。
「もう28じゃけえ孫の顔も見せてくれえや」
それが母の口癖だった。
最初のコメントを投稿しよう!