55人が本棚に入れています
本棚に追加
「折田警視正、待ってください。女王をシロとするには、あまりにも不審な点が多すぎます」
「決定的な証拠がないんだ。仕方がないだろう」
兼好に返事をしながらも、折田はもう新しい事件のファイルに目を通している。
「証拠がなくても真実は真実です」
「その通りだ。女王アリはシロ。捜査は打ち切り。この現実が真実だ」
そうかな。この事件に限らず、現実こそ嘘で固められた世界じゃないのか。
兼好の脳裏に焼き付いている疑問が疼いた。
「もう忘れろ。何もなかったんだ。死臭なんてしなかったし、あそこにはもともと506匹しかアリはいなかったんだ。汚名を返上したい気持ちも分かるが、もう終わったんだ。 次を頑張ればいい。 安心しろ。お前の失敗はマスコミには決して公表しない。 だから、もう忘れるんだ」
折田は持っていたファイルを兼好に手渡した。
最初のコメントを投稿しよう!