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捜査ファイル9 ウェイク・アップ・デッドマン
「俺は一人でもやる」
騒ぎが起こっている今がチャンスだ。
兼好は郊外にある隠れ家へと車を飛ばした。
灯台下暗しと言うにふさわしい完璧な隠れ家だ。
これから先、刑事達に邪魔をされないためには、自分がエジプトにいる間も、刑事達にはまだ日本にいると信じ込ませ、日本に足止めしておく必要がある。
兼好は隠れ家に着くと、まず、車の塗装を黒から白に塗り替え、ナンバープレートも別の番号と付け替えた。
服装も完璧な変装に身を包むと、偽造パスポートや金属探知器にかからない組み立て式の銃など必要な物を全て、キャリーバッグにつめ込み、あっという間にエジプトに行く準備を整えた。
優秀な刑事は、犯罪者としても一流である事は言うまでもない。
刑事達は今頃やっと隠れ家でない方のアパートや空港に詰めかけて、自分を確保する準備を始めたくらいだろう。
無駄な事とは知らずに。
兼好は車のサイドミラーで、自分の変装の出来映えを確かめた。
俺はさっきまでの俺とはまったくの別人なのだ。名前だって…。
「兼好。いや、本名は信濃幸永(しなのゆきなが)だったかな?」
それは鴨野の声だった。
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