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「へえ、この変装を見破りますか?それに経験やデータに頼ってばかりの奴らには、ここは見つけられないと思っていたが、あなたは違っていたようだ」
兼好は鴨野の方を振り返った。
兼好が変装を見破られたのは、これが初めてだ。
兼好豊次という一人の男も、彼の持つ数々の変装のほんの一部にすぎないのだ。
「お前にそれを指摘されてなかったら、今頃とっくに逃げられていただろうな。それよりこんな事をして、刑事辞めることになったら・・・」
「かまいませんよ。その方が動きやすくなるかもしれないし」
鴨野が兼好の眼を覗き込んだ。
兼好は思わず眼をそらしそうになった。
それは刑事の眼だったのだ。
本物の刑事の。
「強がりではないようだな。それにしても、そんなにあっさりと刑事の職を 捨てられるなんて。それにどうして、そんなにこの事件にこだわるんだ?」
兼好は何も言わずに、答えられないという意思を鴨野に伝えた。
「死んだお姉さんの復讐のためか?」
「ど、どうしてそれを・・・?」
鴨野の一言に、兼好は銃を突きつけられた思いだった。
「調べたよ。真実を追う眼でね」
兼好は鴨野に話す事にした。
あの事件の事を・・・。
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