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捜査ファイル10 純情派
「姉さん、綺麗だったな・・・」
兼好は落ち着きを取り戻そうと、煙草を一本つまんだ。
手の震えからか、煙草は二、三本あるかのように見える。
それはいつしか煙草にさえ見えなくなった。
白くて細い煙草の揺れる様子を見つめているうちに、兼好の記憶の中で姉の姿が少しずつはっきりとした形を持ち始めていた。
兼好の姉は、白くて細い美しい女性だった。
兼好の記憶の中で、姉の姿が薄れていたわけではない。
今もはっきりと覚えている。
だが、今までとはまるで違うのだ。
記憶の中から目の前に飛び出してきそうなくらい、はっきりとした形を持ち始めていた。
実際、そうなってくれればいいのにと兼好は願った。
しかし、そんな事はありえない。
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