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因みに去年付き合っていた元カレは釣りマニア。
あの時はその受け売りでしょっちゅう海産物のウンチク、特に東京湾のシャコは人間の死体を食べてるからヤバイ!というしょうもない都市伝説をさんざん聞かされ耳にタコができた。
だからそんな感じでこの車は去年は魚臭くて、今年はタバコ臭い。それに比べたら私の汗臭さなんてそよ風みたいなもののはずだ。
姉の話のペースに付き合っているうちに、気づいたら問題の浮気坂手前の十字路の信号機まで着いてしまった。
連日続く雪のせいで、積もった雪の轍から垣間見える凍結した路面は街灯に照らされてキラキラと怪しく光っていた。もはやアイスバーンを通り越して、大地から隆起するジオラマ模型の山脈のようにも見えた。
「さあどうする?」
ハンドルをカチカチ鳴らす姉のネイル、ひっきりなしに雪を払うワイパー、すでに左にウインカーを切ってる時点でどうするもこうするもない。
赤信号と彼女の眼はすでに試合前のアドレナリン全開で充血してる。
もはや武者震いとも貧乏ゆすりともつかないアクセルの地団駄が本当に鬱陶しくて
「私後ろに乗るね。その方が車の重心安定するでしょ?」
シートベルトを外し、一旦座席を倒して姉の対角線上の後部座席へ這って行く私。
「ちょっと!靴の泥雪で椅子濡れたんだけど」
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