雪の夜⑤『人類最後の男』

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或る雪の夜、小惑星激突に因る氷河期を迎えた地球で、人類最後の男が部屋でノートパソコンに向かって遺書を書いていた。このまま生きていても仕方がない。人は一人では生きていけないのだ。男は遺書をプリントアウトするとモンブランの万年筆でA4判用紙の右下に署名をした。男は本棚からコニャックの瓶を取り上げると半分程残っていた中身を一気に飲み干した。そのままコートも着ないで玄関のドアを開けて外に出る。吹雪の中を数歩進んだ所で男は膝から前のめりに崩れ落ちた。そのまま動かない。暫くして男の後頭部を狙っていたオートマチック拳銃の銃口が下ろされた。人類最後の女である。だが彼女はつい数日前離婚したばかりの男の妻だった。
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