第4章 流星が消えるまで

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仲良く二人で自転車に乗って帰っていくのを見送る。 一時的に止んでいた雨は、夕方になるとまた激しく降り始めた。 夕飯の支度をしているとき、お風呂に入っている時、眠る瞬間まで私はずっと同じことを考えていた。 「なにかすべきことがある筈なのに、それが何か思い出せない」 心の世界にいつもいるはずの夏希は、今日は朝しか現れてくれなかった。 私の知らないところで、何かが動き始めているという何とも言えない落ち着かない予感がする。 仏壇の母の遺影に向かって、私は問いかけた。 「ねぇ、お母さん。 私がすべきことって、何だったからしら?」 勿論、返事はないけれど。 父さんに相談する気にはなれなくて、私は両手を重ねて自分の胸に手を押し当てた。 白装束を着て髪を後ろに結い上げた女性が夢に出てきた。 お供物などを置く器の上には、一握りの髪が白い和紙で結ばれたものが置かれていた。 そこは神社なのどの拝殿の中のような室内で、 天井は低く木製の床は艶々と輝いていた。 正座をして私に向き合いお辞儀をする女性が顔を上げると、 その顔がどういうわけか夏鈴の顔になっている。 声を掛けようとしても声が出てきてくれず、 とても不思議な気持ちで女性の所作を見詰めていることしかできなかった。 懐から短刀を取り出した夏鈴は無表情で鞘から刀を引き抜いた。 その白い刃の輝きに目が眩んで、私は目を閉じた。 その瞬間、耳にはザクっという何かを切る音が届いてきたけれど………
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