第4章 流星が消えるまで

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いつかこんな日が来るとは思っていたけど。 まさか、同時に二人を失くすなんて。 親子並べた遺影の微笑みを見詰めて、 実感のない死を私は受け止められずに呆然と座っていた。 「夏鈴。大丈夫か?」 晴馬が温かいお茶を淹れて、私に差し出してくれる。 「ママ。2人とも戻ってきたよ!」と恵鈴の声がした。 小さな葬儀場の、小さな葬儀室にお爺ちゃんとお母さんの遺体が運ばれてきた。 まだ棺桶が届いていないから、二人とも敷いておいた布団に寝かせられる。 死に化粧をした顔はとても綺麗で、まだ生きているような気にさえさせられる。 病院で司法解剖とは名ばかりの診察を受けた遺体の死因はわからないまま。 持病もないお爺ちゃんはもう年齢的な老衰だろうと片付けられて、 一度脳挫傷を起こして半身麻痺に陥ったお母さんはくも膜下出血という診断が下った。 だけど死亡診断書には「心停止」とだけの記載。 「突然、電池が切れたようにコロッと亡くなったと思います」 そんな短い説明だった。 肌に触れると冷たかった。 弾力を失った皮膚を指で押すと、跡が残るほどに…。 白装束を着た二人に黄泉の国への旅装束を履かせますと言われて、 私と晴馬が母の、恵鈴と燿馬がお爺ちゃんの足に帷子(かたびら)を装着してあげた。 止まらない涙を何度も拭きながら、言葉にならない気持ちを込めて。 頬に頬を重ねて目を閉じた。 けれど、二人からの意思表示は何も感じられない。
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