第4章 流星が消えるまで

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一番必要な時に一度も役に立つことのないこの能力に対して、私は猛烈にもどかさを感じた。 最後に会ったのは、お母さんにお父さんが乗り移った時。 寝ていたお爺ちゃんが起きてきて、私を慰めてくれた。 やっと、本音で話しができるって思った矢先にどうして? 何の予告もなしに、どうして突然逝ってしまったの? 心細くて、どうしようもなくなる。 そんな私を晴馬がギュッと抱き寄せてきて、慰めてくれている。 子供達も私の背中や肩に手を置いて、励ましてくれている。 皆、寂しくて悲しくて遣り切れない筈なのに、どうして? どうしてそんなに優しいの? そう思いながらも、私は喋ることもできないで粛々と進む葬儀を見守った。 青白い顔をした高橋さんは、お母さんの死に顔を見てただ咽び泣き。 えっちゃんとトシさんも、私達の代りに食事のことやお香典の受付などをしてくれた。 波戸崎家の魔女が死んだって、そんな心無い言葉を言って笑いながらお焼香する人もいた。 まだ58歳で亡くなったお母さんを弔おうと集まってきた人は、殆どが職場の同僚の人達だった。 88歳になるお爺ちゃんの友達はもう亡くなっている人が多くて、ご近所さんが顔を出してくれた。 お通夜の晩。 棺桶に納められた二人の傍で、私はじっと待っていた。 だけど、やっぱり。 どういう理由か、身内の霊を感じることはできない。 そんなルールでもあるかのように、時が刻まれていく間中ずっと静寂だけがゆっくりと流れていた。
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