第4章 流星が消えるまで

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無力な私は何のために生まれてきたの? 夏鈴なら、その答えを持っている? 「今日は考え事が深いみたいだね」と、心の世界の夏希が話しかけてきた。 私は両手を開いて、彼の腕の中に取り込まれていく。 安らぎに包み込まれると、さっきまでのもの悲しさが消えていくようで落ち着くの。 「私にはどんな役目があるのか、考えていたの」 「…そうか。僕も、君に出会う直前に同じことを自問自答していたよ」 耳元で囁くように、夏希は私にキスの雨を降らせる。 夏希に出会い、太く短い大恋愛の末に夏鈴を授かって育ててきた。 いいえ、育ったのは夏鈴というより私自身だったかもしれない。 私の方が娘との関わりの中で、沢山の気付きを与えて貰っていた。 そして、今は。 夏希とこうして魂の次元での問題を一緒に考えてもらえるなんて。 私はかなり恵まれているのね。 「僕は、君と出会い夏鈴をこの世界に生み出したことを誇りに思っているよ」 「その言葉を、あの子に伝えてあげたら?」 夏希の手に力が籠った。 「そうだね。 あの子はこれから、僕たちが逃げ続けてきた問題と対峙するんだ。 励ましてあげたい」 「そうよね。夏鈴には晴馬君がいる。彼の生命力の強さがあの子を支え続けてくれるように、晴馬君にもお願いしておきたいわ。今度、私に憑依するなら夏鈴と晴馬君が揃っているときにして頂戴ね」 「わかってるよ。楽しみだな。夏鈴が選んだ伴侶と話ができるなんて」
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