第4章 流星が消えるまで

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結構な音量でそう宣言した恵鈴の表情は、私の知らない顔つきになっていた。 まるで、冒険に出かけようとしている少年のような強い目をして。 「思いっきり絵を描きたい。 今までは、何となく描いてたから自分でも不完全燃焼で気持ちが悪かったんだけどね。 最近はちょっとした時に構想してしている自分がいるの。 実際に描いてみないとどんな絵が描けるのかはちょっとわからないんだけど。 だから、もしかしたら私。パパと同じように芸術大学に行きたいかもしれなくて…」 そこまで言うと語尾がどんどん小さくなっていった。 恵鈴はなぜか泣き出しそうな顔で、燿馬を見詰めている。 不安なのね? 燿馬は茫然としたかと思ったら、すぐに真面目な顔付きになって恵鈴を見据えている。 「…燿馬、怒ってる?」 「なんで怒る必要があんだよ? お前がちゃんと自分の進む道を考えてるって知って、俺はホッとしてるよ。 ずっと、何考えてるかわからなかったし」 まるで晴馬君みたいな口調で、そんな大人びたことを言う燿馬なんて。 すごく良いじゃない。 対する恵鈴はまだ泣き顔のまま、身を縮めていた。 「…どうしてそんなに平然としてられるの? 私、もしかしたら東京に行くって言ってるんだよ? 私が居なくなっても良いの? 燿馬はそれで、平気なの?」 いつもの強気な口調だけど、やっぱりとても寂しそうな感情が表に出ているような声だわ。 恵鈴は燿馬から離れたくないのね。同じように離れたくないって言って欲しいのね。
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