第4章 流星が消えるまで

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「東京に行くぐらいのことで、お前が俺の前からいなくなるなんて思ってないから。 俺のことが気がかりで自分の将来を棒に振られる方が、重たいわ。 そんな顔すんなよ! お前の絵の才能は誰が見たって明らかだったんだから。 やっと、その才能を使って何かしたいって思うんだったら行動あるのみだろ? 心配しなくったって、俺はお前を簡単に諦めないって何度言えば信じてくれる? 俺を舐めんなよ?」 燿馬はテーブルの上で恵鈴の手を握りしめてそう言った。 嗚呼、なんて素敵なのかしら! ついつい微笑ましくなって、二人のやり取りに見惚れてしまう。 だけど、言葉で言うほど簡単なことではないのよね。 それはきっと、燿馬なら気付き始めているし、恵鈴はよく解っているみたい。 「燿馬も東京に行こうよ」 恵鈴からそんな唐突な提案が飛び出した。燿馬は顔色ひとつ変えずに、黙っている。 「考える。だけど、今はまだ約束できない。 俺には俺の順序があるんだ。悪いけど、ちょっと時間をくれ」 ぶっきらぼうだけど誠意がある燿馬の返事を聞いて、恵鈴は少しだけホッとしたような顔をした。 「燿馬なら造形の方が向いてるんじゃないかな?」 「お前、俺を親父と同じ道に行かせようとしてるだろ?」 「だって、模型作りに凝り出したのはパパの影響を受けたからなんでしょ?」 「俺は建築に興味があるんだよ。親父みたいな空間デザインじゃない」
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