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「…別に」
私は、夫から目をそらしてリビングから出て行こうとした。
「そうやって俺の目を見ないのが証拠だよ。残念ながら今日の東京行きはなくなった」
「…え」
大橋の元へ車を取りに行き、九州から出るという、描いていた逃亡計画が崩れていく。
「サミットには議長が行く事になったからな、今日は休日だ」
落胆の色を隠せない私を楽しそうに見る。
「どーせ、あの男に会うつもりだったんだろ?」
″そうはさせない″ と、私の腕を引っ張った。
「お前は、最低あと2年、家から出られない。
周りに心の病だと話してる」
「…2年?」
次の選挙が終わる迄?
「それまで、どうしても男が欲しくなったら大人の玩具でも買ってやるよ」
私をソファーへ突き放し、声を立てて笑う夫が、殺したい程、憎たらしく思えた。
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