第四話 身代わりの恋

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私には分からない。 「どうして、そんな家庭に(こだわ)るの?」 ″そんな″ とは言い過ぎかもしれない。 だけど。 偽って結婚をさせ、料理も仕事もしない寝てばかりの妻と、血の繋がらない子供。 それを守る事がそんなに大切なのか。 家庭が壊れた私には分からない。 大橋は、少しだけ目を潤ませて答えてくれた。 「本当は考えたよ。…全部捨てて…梓と遠くに行けたらって。…手紙貰って本気で考えた」 途切れ途切れに話すその言葉に、誤魔化しや嘘は感じられなかった。 「だけど。どんなに考えても行き着く答えは決まってる。俺は、アユミを見捨てられない」 この時。 初めて、大橋は奥さんの名前を口にした。 どこかで聞いた事のある名前だと思った。 その人もまた理の知り合いかもしれない。 「…もう、私と会わなくても、平気なの?」 私と恋をする事で、現実逃避するんだと言っていたのに。 「梓が幸せになってくれれば、それでいいよ」 大橋は、最後に握手を求めてサヨナラをしようとした。
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