epilogue

2/4
194人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
 黒いゆったりとしたリネンのシャツとパンツのコウの髪は洗ってタオルドライしただけだから、額に髪がおりている。ときたま無造作にかきあげる仕草が色っぽい。昨晩から繰り返したSEXの余韻のせいで俺の頭は相当色ボケしている。 「何をまじまじと見ているのだ」 「んん。俺コウがそういう髪をしている時が一番好き」  僅かに頬が赤くなる。逢ったばかりの頃は上手に笑うこともできなかったのに、今は人並みの表情を浮かべられるようになった。とはいえ、僅かの動きや紅潮だから身近な人間にしかわからない変化に留まっている。 「それを言うなら、浴衣は私の前でだけ着ればいい。他人が見るのは実に腹立たしい」 「なにそれ」  ソファに座る俺の隣に腰をおろすと俺の髪に優しく指を入れた。 「だいぶ伸びたな」 「そうだね、もう少ししたら束ねられる。着物や浴衣ならそっちのほうがいいだろうし。それに髪を切りにいく手間もはぶける」  コウは何かを考えるように視線をはずした。 「約束にもうひとつ加えよう」 「約束だらけになりそうだ。それで?どんな約束?」 「ヨシキの髪を毎朝結うのを私の仕事にする。何からなにまで閃にやらせるのは面白くない。なんだ、恥ずかしいのか?顔が赤いぞ?」  この甘ったるい雰囲気の中でそんなことを言われて照れないでいられるほど冷血人間じゃないんだよ、俺は。コウに毎朝髪を梳かしてもらう?悪くない。  
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!