十五

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 昨晩の会話が頭に浮かんだ。 「血塗れた姿で帰ってきてもヨシキは私を抱き締めるだろうか。怯えて逃げるだろうか」 「逃げないよ。ちゃんと抱きしめる」 「その時になってみないとわからないではないか」 「一緒に風呂に入って綺麗に洗ってやるよ。それが皓月の生きる道であり術だろう?嫌だ怖いの問題ではない。 俺は俺のできることをするさ。綺麗に洗い同じベッドに横になって朝一緒に目を覚ます。 一日の終わりと始まりを皓月と共にするよ。その時間だけは、誰も疑わなくてもいい。俺を信じて安心すればいい」  目を見開いた皓月は、しばらく何も言わず空を見詰めて佇んでいた。  今までそんな当たり前のことを言ってくれる女はいなかったのか?そんなふうに思える相手はいなかったのか?  考えてみれば、俺だってこんなこと誰かに言ったのは初めてだ。思い出すと少し恥ずかしい。  俺の間違って生まれたのとは違うけれど、皓月も随分寂しい生き方だ。俺が笑って花を愛で、信じられる人間として皓月が望むなら、それをするまでだ。  少し寂しさが減るだろうか。いや、減らしてやる、それが俺の役目だ。
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