十七

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「権田としては、そのパイプが嫌がるヤクに手を出す気はないが若頭が水面下で動いているということだな。もう一つの質問に答えろ。ボンクラとヤクザ、何故仲良しになった?」 『私が仲良しなのは桜沢です。あの男と私は共闘しながら世の中を裏側から取り仕切っている。これからもっと強大になるでしょう。 権田を背負いヤクザとして存在する桜沢と、存在すらおぼろげな私が組むと、なかなか面白い事ができるのです。 ボンクラは仲良しではありませんよ、やっかいなものです腹違いの兄という存在は』  斉宮とヨシキが?  顔はまったく似ていない、そして人間の質が違いすぎる。腹違いということは斉宮は権田の血をひいているということか。  ヨシキがヤクザの世界で窒息しそうになるのも解る。腹違いの弟こそがヤクザ向きであるし、補佐についている桜沢は時期組長としての期待もあるだろう。その中で土と花を愛でる非力な美しい男など必要とされるはずもない。 「まさか、お前……権田を継ぐのか?」 『それは絶対にありえませんよ。私の人生はヤクザによってねじ曲がって私自身もこんな人間になってしまったので、あそこに入ることはない。現に私は芳樹の幼馴染として組の中では認知されています。 芳樹は女に生まれるべきでした。花を愛でる美しい姫なら、もう少し生きやすかったはずなのです。アレは間違った場所に生まれてしまった。その対抗馬として勝手に作られたのが私です。どっちにしても幸せとは程遠い生まれですよ』  間違った場所と言った。綺麗な男と斉宮が同じように表現している。桜沢の知り合いだという綺麗な男は間違いない……あの男だ。闇にまぎれた赤いポスト。雑居ビルの店で門番をしながら斉宮を支えている。  権田、桜沢、斉宮……そしてヨシキ。どうやらわたしは大きな環の中に取り込まれたようだ。  姫として私がヨシキを貰い受ければ、桜沢が権田組を継ぐことになるだろう。そして権田は斉宮という宝の山を持つ男と共闘し日本を裏から操るつもりだ。  ふふふ……面白くなりそうじゃないか。
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