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事件発覚
8月24日(土)
休日の早朝から衝撃的な事件が発覚した。S市のある夫婦が無惨に殺されたのだ。
この事件はすぐにニュースになり、テレビで放送され、朝からこの事件は、世間を震撼させた。犯人は分からず、証拠もない。
早朝から警察は捜査を始めた。
「無惨なことするなぁ」刑事の榎木柊人が言う。
「遺体の前で突っ立ってないで、証拠の一つでも見つけろ」上司の原野正が言う。
「はい。…でも、物的証拠が何一つないですね」
この部屋に物的証拠はない。そして、他の部屋にもない。夫婦はリビングで殺された。としたら、この部屋に証拠があるはずだ。
リビングに犯人が入ってきたわけだが、窓ガラスを割ったり、窓や扉が開いていたわけでもない。ということは、玄関から入ってきた?
「玄関に指紋は」
「ありませんでした。足跡も夫婦のものだと思われるものだけでした」
「足跡がない?」あり得ない。足跡を付けないで犯行とは。
「こりゃ、大変な事件になりそうだ」原野は言った。
〇〇〇
「怖いわねぇ…」道の真ん中で、おばさんたちが喋っている。話の内容は、あの事件のことだろう。
「あの」
「はい?」ひとりの女性がこちらを向く。
「あの、私は刑事の榎木といいます。そこの夫婦とは皆さん顔見知りですか?」
「ええ。奥さんは人柄がよくって。会うと、笑顔で挨拶してくれたり」主婦の一人は愛想よく言った。
「旦那さんは」
「旦那さんも挨拶してくれたわよ。仲もよさそうだったし。どうしてあんなことに」
「引き続き捜査します。なにかありましたら、また」
恨まれていたとか、そういう情報はない。
「この事件。ムズすぎだろ…お?」前方に若いお兄さんが。
「あの!」榎木は走り寄って言った。
「はい?」男は少し迷惑そうな顔で言った。
「あの、ここら辺に住まれてる方ですか?」
「はい」
「私は刑事の榎木と申します。あの…昨日、何か見たとかありませんか?」
「…とくには」
「聞いたところによると、殺された夫婦は憎まれたりとかはしていないようなんです。何か知りませんか?」
「いいえ。私もよく挨拶してもらいましたが、そういうのはなさそうです」
「ですよね。はい、ありがとうございました。また何かあったら仰ってください」
「えぇ」
やっぱり、ないか。あの夫婦を殺したのは誰なんだ?
危なかった。逃げるまえに警察と会うなんて。絶対あってはならないことだ。
まぁ、バレなかったから良かった。
さぁ、逃げよう。誰の目にも触れぬ前に。
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