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●花の意味●
いわゆる『お嬢様』には、二通りあることを、私は大学で知った。
『お金持ち』のお嬢様は、ブランド品で身を固め、高級化粧品やエステで、つやつやにした顔を、流行のメイクで決めている。
ファッション雑誌のコピーのような髪型と、洋服を身につけた『彼女達』は、華やいでみえたけれど、似たような印象を受けることは否めない。
そして、一番の関心は、異性との恋愛。
私とは、話題があうはずもなく、一緒に居たい相手でも無い。
『彼女達』が、高級ブランドも持たない、華やかさに欠ける私たち二人を誘ってくるのは、引き立て役、もしくは対象外を押しつける為だという事もわかっていた。
でも、それでもいい。
仕送りだけでは、あまり贅沢は出来ない私にとって、夕食代が浮くというのは、ありがたいことだし、瞳と一緒にいられるのは嬉しい事だ。
みんなの利害は、一致していると言える。
でも、たまに彼女たちが狙いを付けた男の子が、私に興味を抱くことがある。
その時の、彼女たちの裏の顔は本当に怖い。
私は、興味の無いそぶりをして、彼らの誘いをあっさりと断る。
そして、ひたすら食べて、瞳と話をして・・・それでいい。
それが『彼女達』の望みであり、私の望みでもある。
大学には、『本当のお嬢様』もいた。
普通の服装に、普通の顔。
ただ物腰と言葉遣いは、別格。
類は類を呼ぶ。
彼女たちは、同類としかつき合わない。
だから、私と親しい間柄になる人も居なかった。
彼女たちはコンパなど行かない。
卒業後は、結婚か、家事見習いか・・・・
いずれにしても、自由恋愛には興味を示さない。
何を話しても、優しげな笑顔で、「そうね」と上品な声で答える彼女たちの、本心まではわからない。
でも、『結婚』を、当然のゴールにしていることは、『彼女達』と変わりは無いし、むしろ『彼女達』よりも、進んでその道を歩んでいるようにさえ思える。
そして、速く『結婚』して、それから先の人生を楽しもうとしているように思える。
『彼女達』と違い、『結婚』を、ゴールとしていないように思えるのは、そのおっとりとした物腰や、ふと耳に入る、趣味や習い事などの上品な会話が、そう思わせるのかもしれない。
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