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地元からさほど遠くは無いけれど、都会で、教職を取れる大学を志望した。
三者面談で、進路指導の先生に勧められたのが、この大学だった。
「歴史もあるし、割合のんびりとした校風だから、君には合っているんじゃないか?」
進路指導の先生の言葉に、両親も納得してくれた。
その時から、その大学に、「お嬢様」と呼ばれる人が多いいう噂は、知っていたけれど、両親には黙っていた。
大学は、想像以上に華やかだった。
毎日が、競い合って咲く花々に囲まれているようだった。
瞳のような、可愛い女の子も、美人も好きだけれど、私が一番好きなタイプは・・・
そう、背が高くて、ちょっと中性っぽくて、気が強くて、でも優しくて。
今日逢った、あの人が、まさしくそんなイメージだった。
彼女との出会いのシーンを、脳裏で何度もリフレインしていくうち、うっとりと、私は妄想の世界に入っていく・・・・・・・・・・・・・・・・・
教授の声も、馬耳東風。
彼女の姿を反芻する。
素敵だった。
もう一度逢えるかしら・・・
どこの学部だろう?今まで一度もあったことが無いから、上級生かもしれない。
初対面の私に、声をかけてくれた。
誰にでも、あんな風に声をかける人なのかしら?
私だから・・・私だから、声をかけてくれたのならいいのに・・
瞳に肘でつつかれて、はっとすると、私の真横に教授が立っていた。
瞳が、小さな声で、教科書のページを言ってくれたけれど、その声は教授にも聞こえていた。
「・・・・・・・・・・」
ミス雫は、フリーズ。
私は、英語の詩を10編訳すという「名誉ある宿題」を「特別」に教授から言い渡された。
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