●鐘の音●

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地元からさほど遠くは無いけれど、都会で、教職を取れる大学を志望した。 三者面談で、進路指導の先生に勧められたのが、この大学だった。 「歴史もあるし、割合のんびりとした校風だから、君には合っているんじゃないか?」 進路指導の先生の言葉に、両親も納得してくれた。 その時から、その大学に、「お嬢様」と呼ばれる人が多いいう噂は、知っていたけれど、両親には黙っていた。 大学は、想像以上に華やかだった。 毎日が、競い合って咲く花々に囲まれているようだった。 瞳のような、可愛い女の子も、美人も好きだけれど、私が一番好きなタイプは・・・ そう、背が高くて、ちょっと中性っぽくて、気が強くて、でも優しくて。 今日逢った、あの人が、まさしくそんなイメージだった。 彼女との出会いのシーンを、脳裏で何度もリフレインしていくうち、うっとりと、私は妄想の世界に入っていく・・・・・・・・・・・・・・・・・ 教授の声も、馬耳東風。 彼女の姿を反芻する。 素敵だった。 もう一度逢えるかしら・・・ どこの学部だろう?今まで一度もあったことが無いから、上級生かもしれない。 初対面の私に、声をかけてくれた。 誰にでも、あんな風に声をかける人なのかしら? 私だから・・・私だから、声をかけてくれたのならいいのに・・ 瞳に肘でつつかれて、はっとすると、私の真横に教授が立っていた。 瞳が、小さな声で、教科書のページを言ってくれたけれど、その声は教授にも聞こえていた。 「・・・・・・・・・・」 ミス雫は、フリーズ。 私は、英語の詩を10編訳すという「名誉ある宿題」を「特別」に教授から言い渡された。
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