118人が本棚に入れています
本棚に追加
その日のコンパは、想定外の激戦だった。
他のメンバーのターゲットが、一人に絞られてしまったから。
瞳も、早々に戦線離脱して、料理を取り分けたり、オーダーを頼んだりと、『彼女達』のフォローに忙しそうだ。
ブランド品こそ身につけてないけれど、瞳は可愛い・・・と、見ていて思う。
ふんわりとした髪型に、丸い輪郭。
派手さは無いけれど、目も、鼻も、唇も整っている。
笑ったときの、片えくぼが、愛らしい。
ピリピリとした雰囲気を感じながらも、もくもくと料理を食べていると、そのターゲットが私に話しかけてきた。
「素敵なブラウスだね。白が似合うね」
「ありがとう」
私は、社交辞令と思い、営業スマイルと短いお礼だけを返した。
『彼女達』の、強い視線を感じながら・・・
その男子生徒が褒めてくれたブラウスは、近所のスーパーで2980円だったもの。
スカートは、安売りのお店で3980円で買った、タータンチェックのスカート。
多分、『彼女達』のバッグの1/10くらいだろう。
『彼女達』が、ちらっと視線で私に合図を送る。
はい、無視ですね、無視。
「話をするのは苦手?五月蠅かったらごめんね」
懲りずに、相手が聴いてくる。
「そうね、食べるのには邪魔かも」
あえて、嫌われそうな台詞を言う。
無駄な争いごとは、避けたい。
「料理、もっと取ってきてあげるよ」
私の冷ややかな対応に動じる事の無く、その人は言った。
私は、「いいです」と、言って、なにげないそぶりで、席を立つ。
すると、待っていたかのように、真澄が私の座っていた席に滑り込む。
私は、別段用もないけれど、立った手前、仕方なく、お手洗へと向かう。
その間に 、争奪戦を決める動きが始り、私が席に戻ると、大きく勢力図ができあがっていた。
私は、離れた席に座ると、一人で食事を続ける。
K大は、おぼっちゃまも多い。
お店も、いいお店で、料理も美味しい。
私は、それで満足だった。
最初のコメントを投稿しよう!