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息を切らせながら教室に入ると、予鈴の鐘の音が聞こえた。
まだ、立ち歩いている女子学生も居て、どうやら間に合った様子に、ほっとする。
始業時間には間に合ったし、珍しく、教授はまだ来ていなかった。
大学生になって驚いたのが、『教授』と呼ばれる人が、割合授業時間時間にルーズな事。
中には、きちんとしている教授もいるけれど、大抵は高齢。
90分の授業は、生徒にも長すぎるし、老体の教授にとっては、命を縮めかねない長丁場。
大抵の場合、遅れて来る方が、どちらにとっても幸せな事なので、特に問題にはならないのだ。
一般教養の英語の授業なので、大講義室。
ひな壇のように並ぶ机と、華やかな女子大生が集う姿は、何度見ても、壮観だ。
制服だらけだった高校までの光景がモノクロ映画だとすれば、今は、フルカラーの映画スクリーンのようだ。
色々な花が咲き乱れる花畑を見下ろすだけで、嬉 しくなってしまう私は、やはり異質な存在だと、自覚する。
女性が好き・・・でも、それは『恋愛』とは違う。
『恋愛』は、もっと衝撃的なものだ。そう、さっきのように・・・・・
私は、呼吸を整え、ひな壇のように並んだ机に座っている女子学生の中に、中村瞳の姿を見つけて、その側へと移動する。
ファッション雑誌から抜け出したような、お洒落で、高価そうなファッションに身を包んだ女子学生や、ブランド物のバッグが並ぶ机の間を通りぬける。
舶来の、少しきつい香水の香りが、見えない薄雲のように、顔の周りにまとわりつくのをかき消すように瞳に近づき、声をかける。
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