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「おはよう、瞳」
瞳は、ノートから顔をあげて、笑顔を見せる。
「おはよう。またギリギリね」と言いながら、席を一つ移動して、空けてくれた。
「朝は苦手なの・・・」
そう言いながら、隣の席に座り、鞄からノート類を取り出す。
荒くなっていた呼吸は落ち着いてきたけれど、胸の動機は、すぐにはおさまりそうもなかった。
瞳は、きちんと髪の毛をセットし、上品なメイクに、淡いピンク色の口紅をつけていた。
今日も、可愛い・・・と、心の中でつぶやく。同性に対して、こんな事を思う私は、やっぱり私は『普通』では無いのだ。
まだ、胸は激しく、動機打っている・・・
「朝から英語の授業だと、私も、眠たくなりそうよ」
瞳は、そういいながらも、ノートを広げて、チェックをしている。
ほどほどに遊び、真面目に勉強もする。
そして、男性との出会いを、心待ちにしている瞳。
『一般市民』の私にとっては、『お嬢様』の多いこの大学の中で、瞳のような、普通の感覚の友達は、貴重な存在だ。
「予習してきた?」
瞳が、私のノートをのぞき込む。
ハーブ系のシャンプーの香りが、すぅっと肺の中に入っていくと共に、その距離感に、胸が風に煽られる波のようにざわめき、体が少し緊張してしまう。
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