118人が本棚に入れています
本棚に追加
「一応。朝は絶対に起きられないから、昨日の夜、頑張ったわ」
「そのあたりは、ぬかりないわね」
瞳は、私のノートから、自分のノートへと視線を移し、少し私の側へ移動させた体を元の位置に戻す。
そのわずかな距離感でさえ、かすかな安堵感を覚えてしまう。
こんな風に、同性に対して意識するようになったのは、いつからだろうか?
そして、ごく当たり前のように異性を求める事に、違和感を感じるようになったのは・・・・
「眠くても、一般教養だから、落とすわけにはいかないし。当てられるから、英語だけは予習しておかないとね」
私は、瞳に対する、軽い緊張感をかき消すように、当たり障りのない会話を続ける。
「あの教授、いきなり当てるからねぇ。英語教育、中学生の時からだから・・・8年目?でも、さっぱりだわ」
「うん。英語教育に問題があると思わない?文部省の責任よね」
「眠いわりに、難しい事を言うのね」
瞳が、くすっと笑う。
自分では、それほど難しい話をしたつもりは無いのだけれど・・・・
「ね、今夜 、うちの寮の子達と、K大とのコンパがあるんだけれど、行く?」
少し声をひそめて、でも、興味津々のまなざしで、瞳が誘ってきた。
「行くわ」
私は、即答する。
それが、『普通の、特定の人が居ない女子学生』の姿だからだ。
と、本鈴のチャイムと共に、教授が入ってきて、私達は、そこで会話をやめた。
最初のコメントを投稿しよう!