●鐘の音●

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瞳が、ノートの端に、綺麗な文字で走り書きをする。 「真澄の友達の、友達だって」 真澄というのは、瞳と同じ寮の女の子で、活動的で社交的。 他の大学のサークルにも入ってネットワークを広げていて、瞳の寮ではリーダー的存在だ。 「学部は?」 私が、その走り書きの下に、コメントを続ける。 「経済学部。教育学部でなくて、残念ね」 瞳は、私がなんとなく口にした『私、将来学校の先生になりたいから、同じような人がいいな』と言った言葉を、覚えている。 「友達の友達が、教育学部かも」 「それもありね」 「会費は?」 「男子負担」 「ラッキー」 そんな、普通の女子大生のような事を書いているけれど、本心は、コンパはあまり好きでは無い。 お酒もあまり飲めないし、お互いを品定めするような雰囲気も、ことさらに自分を良く見せようとPRする空気も苦手だ。 でも、会費が、男子負担だと思えば、我慢出来なくもない・・・ どうして、好きでもないコンパに参加するかというと、それが「普通の女子大生」だから。
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