●鐘の音●

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私が、生まれ育った田舎を離れ、都会の大学に進学したのは、切実な『出会い』を求めての事。 でも、その『出会い』は、異性との出会いでは無い。 『同類』を探す為だった。 私は、美人ではないけれど、可愛いと言って貰える容姿に、生まれる事が出来た。 男の子にも、それなりに好かれた。 だけど、子供の頃から、『女友達』は特別な存在だった。 大好きで、特別な存在だった。 物心ついた頃から、私の視線は、可愛い女の子の姿を追い求めていた。 お気に入りの女の子を見つけると、自分から、仲良くなりに行った。 仲良くなれたら、時には手を繋ぎ、お揃いのハンカチをプレゼントしたり、門限ぎりぎりまで「一緒にいられる事」が楽しくて、嬉しくて。 だけど、思春期を迎えると、私にとって特別存在だった『女友達』は、異性に夢中になっていった。 いつも一緒だったから、私も一同じように異性を好きになるはずなのに・・・私は、異性に夢中になることが出来なかった。 好きな異性の、一挙一動に、嬉しそうに笑顔を見せたり、時には涙を見せる『女友達』の相談に乗ったり、励ましたりしながらも、心のどこかで、両思いにならない事を願っている自分がいた。 『彼女達』は 、どんどん、遠くなり、私は人には言えない孤独感を抱えるようになった。 『彼女達』は、好きな異性をみつけて、いずれは結婚して、子供を産む事に、何の疑いも抱いていないし、夢すら抱いている。 私は、「子どもを作る」という行為を知った時に、おぞましいものを感じた。 とても、自分には出来ない事だと思ったけれど、誰にも言うことが出来なかった。 大切な「女友達」にも。
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