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「朝方帰って仮眠取ってきたからな」
「そこまでして来るんだ?」
「当たり前だろ? 美味い飯が食えるんだから」
そう言ってニッと笑う悠馬から、ほのかにいい香りがする。
櫻子は思わずドキリとした。
人の家に来るのだ、徹夜明けでそのままという訳にはいかない。
仮眠を取る前か後か、おそらく後だろうが、シャワーするなり何なりしているはずで。
「普通、逆よね……」
誰にも聞こえないほどの小声で呟く。
異性から漂ういい香りにドキッとする、なんていう少女マンガ的展開は、男性が気になっている女性に対してがお約束だ。
何となく悔しくなってしまう。
「何不機嫌になってんだよ? デコピンが痛かったか?」
「痛かったわよっ」
「そっか。じゃ、もう一回な」
と笑いながら、もう一度櫻子の額にデコピンする。
痛-いっ!! と叫びながら仕返しをしようと櫻子は悠馬を追いかける。が、簡単に捕まるような悠馬ではない。
しばらく追いかけっこが続いた後、藍李が二人に声をかけた。
「はい、終わり! 食べよう!」
相変わらずいつも通りの二人に、藍李も須王も呆れつつではあるが、優しい視線を向けていた。
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