ナチュラル (01)

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「朝方帰って仮眠取ってきたからな」 「そこまでして来るんだ?」 「当たり前だろ? 美味い飯が食えるんだから」  そう言ってニッと笑う悠馬から、ほのかにいい香りがする。  櫻子は思わずドキリとした。  人の家に来るのだ、徹夜明けでそのままという訳にはいかない。  仮眠を取る前か後か、おそらく後だろうが、シャワーするなり何なりしているはずで。 「普通、逆よね……」  誰にも聞こえないほどの小声で呟く。  異性から漂ういい香りにドキッとする、なんていう少女マンガ的展開は、男性が気になっている女性に対してがお約束だ。  何となく悔しくなってしまう。 「何不機嫌になってんだよ? デコピンが痛かったか?」 「痛かったわよっ」 「そっか。じゃ、もう一回な」  と笑いながら、もう一度櫻子の額にデコピンする。  痛-いっ!! と叫びながら仕返しをしようと櫻子は悠馬を追いかける。が、簡単に捕まるような悠馬ではない。  しばらく追いかけっこが続いた後、藍李が二人に声をかけた。 「はい、終わり! 食べよう!」  相変わらずいつも通りの二人に、藍李も須王も呆れつつではあるが、優しい視線を向けていた。
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