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大学生になれば自由になれる、高校の頃はずっとそう思っていた。
でも、実際になってみれば、思ったより自由でもない気がする。
講義も真面目に出席していればそれなりに忙しいし、友人との付き合いも気を遣うことが多くなった。
高校の頃はそんなこと気にしたことがなかった。皆、気心が知れていたし、これが自分のキャラクターだと認められていたせいもあっただろう。
大学に入って高校の頃の友人とは離れてしまうと、人間関係は一からのスタート。最初から以前と同じように振舞うわけにもいかない。
それに、高校卒業を機に、ほんの少し自分を変えたかった。
外見ばかり着飾るのではなく、中身も伴ったイイ女になること。
そうすれば、きっと出会える。
──私の良さを認めて、私でないとダメだっていう男に。
あの男が言ったのだ。
あの時に言った言葉はただの慰めだったのかもしれないけれど、どれだけ嬉しかったか、どれだけ救われたかわからない。
だから信じようと思った。信じられると思った。
あの男はきっともう自分の言ったことなど忘れているだろう。それでいい。
とびっきりのイイ女になって、イイ男をゲットして、「やるじゃん」と言わせたい。
未だ自分を子ども扱いし続けるあの男に、イイ女になった自分を認めさせてやるのだ。
須王櫻子は、気合を入れるようにスッと背筋を伸ばし、軽やかな足取りで学内を歩き始めた。
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