ナチュラル (01)

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 大学生になれば自由になれる、高校の頃はずっとそう思っていた。  でも、実際になってみれば、思ったより自由でもない気がする。  講義も真面目に出席していればそれなりに忙しいし、友人との付き合いも気を遣うことが多くなった。  高校の頃はそんなこと気にしたことがなかった。皆、気心が知れていたし、これが自分のキャラクターだと認められていたせいもあっただろう。  大学に入って高校の頃の友人とは離れてしまうと、人間関係は一からのスタート。最初から以前と同じように振舞うわけにもいかない。  それに、高校卒業を機に、ほんの少し自分を変えたかった。  外見ばかり着飾るのではなく、中身も伴ったイイ女になること。  そうすれば、きっと出会える。  ──私の良さを認めて、私でないとダメだっていう男に。  あの男が言ったのだ。  あの時に言った言葉はただの慰めだったのかもしれないけれど、どれだけ嬉しかったか、どれだけ救われたかわからない。  だから信じようと思った。信じられると思った。  あの男はきっともう自分の言ったことなど忘れているだろう。それでいい。  とびっきりのイイ女になって、イイ男をゲットして、「やるじゃん」と言わせたい。  未だ自分を子ども扱いし続けるあの男に、イイ女になった自分を認めさせてやるのだ。  須王櫻子は、気合を入れるようにスッと背筋を伸ばし、軽やかな足取りで学内を歩き始めた。
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