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『彼女を危険な目に遭わせずに』
胸がキリッと痛んだ。
「彼女」というのはどういう意味なのか。
単なる三人称なのか、それとも──?
「姉貴、あの時のことは俺も懲りてる。あんな真似はもうやらない」
「え!? でも……」
「それに、俺は今社会人で、いつもこいつの傍にいてやれる訳じゃない」
また自分の存在で相手が逆上し、行動をエスカレートさせてしまったら、今度こそ間に合わない。あの頃のように自由に動ける訳ではないのだ。
悠馬の言葉に、藍李も残念そうに頷く。
「そうだね。今は向こうの気持ちが逸れることを祈るしかないね」
「心配してくれてありがとう、藍李さん」
藍李は笑って首を振り、櫻子の手をぎゅっと握りしめた。
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