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── 一年後。
空港から外に出た櫻子は、ホッと息をつく。馴染みのある空気が心地いい。三月とはいえ、今日は日差しが暖かで、ポカポカ陽気に包まれている。
まるで自分の帰国を祝ってくれているような気がして、櫻子の表情には自然と笑みが浮かんでいた。
「櫻子ちゃん!」
声がした方に身体を向けると、義姉が大きく手を振って駆けてくるのが見えた。
「藍李さーん!」
櫻子も負けじと大きく手を振り返す。
藍李は櫻子の目の前に来ると、いきなり抱きついてきた。
「櫻子ちゃん、おかえりなさいっ!!」
「ただいま、藍李さん!」
女二人でぎゅっと抱き合っていると、櫻子の頭にポスンと温かい手が乗る。
「おかえり、櫻子」
「お兄ちゃん! ただいま!」
兄に笑顔を向けると、そのままポンポンと頭を撫でられた。
その久しぶりの感触に、櫻子はなんとなく照れくさくなる。
「母さんが首を長くして待ってるから、とっとと行くぞ」
須王はそう言って、櫻子の大きな荷物を運んでいく。
櫻子と藍李は顔を見合わせてニッコリと笑み、後を追いかけた。
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