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1章 荒野に佇む
僕は散歩をしていたはずだった。左目にかかった長い前髪を気にしながら真っ直ぐ歩いていた……気がする。
しかし、目の前……というか僕の周り360°全てが見慣れない景色で、草が生えていることが奇跡といえるほどの荒地だった。
とりあえず、持ち物の確認をすることにした。肩に下げていた袋を地面において僕はしゃがんだ。中には途中で食べようと思っていたパンの切れ端と一応持ってきていた水。このふたつだけだった。
――せめて、地図とコンパスさえあれば……
来た道と思われる方向に引き返そうと僕は、踵を返した。
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