変化の日々

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この競争は、一度出遅れるとなかなか取り戻せない。 「だから、今の勝者になるのは駄目だ。」 男はギャンブルに出た。勝負の土俵を変えるのだ。誰も見向きもしない落ちこぼれの中から、隠れた有能な人間を探す事にした。そういう人に変化すれば、一発逆転、世界を先導出来るかもしれない。皆が自分に成る頃には自分はまた掘り出し人を見つけ出せる。勝者への道と思われた。 男は閃いた。 「落ちこぼれの中から、長い間変化をしていない人を選ぼう。そういう人は才能をバレないように隠して生きているに違いない。」 男はとある笛吹に目を付けた。大きなリュックを背負い、ゆっくり歩きながら笛を吹いている。かれこれ数十年、変化せずに暮らしている。 「どうやって生計を立てているかは不明だが、他の人間に変化しないということは、見事な才能を隠しているのだろう。」 男はその人間のデータを取得し、変化した。見た目も、才能も、性格も、人格も、その笛吹に変化した。 「ああ。世の中は、なんてくだらないんだろう。皆は急ぎ過ぎている。のんびり笛を吹いて、ゆっくりと死んでいこう。」 男は笛を吹きながらゆっくりと歩き始めた。 笛の音は、あちこちから聞こえてきた。
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