変化の日々

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変化の日々

男は必死に探していた。より有能な人間を。より新しい人間を。 それが世の中を勝ち抜く唯一の方法だからだ。 科学の進歩により、人は他の誰にでも成れるようになった。見た目だけでは無く、中身も自由に他人に変わる事が出来る。才能は勿論、性格や人格、思想まで他人になれるようになったのだ。 脳変化と呼ばれたその技術は世の中を大きく変えた。 当初は、この技術により人々の個人間の差が無くなり、平等で平和で進歩的な世界になるだろうと思われた。 しかし、たとえいくら有能な他人に成っても、周りも有能な別人になると、その社会で勝ち抜くには、次から次へとより有能な他人に変わる必要が生まれてしまった。 終わることの無い変化の日々。 男は疲弊していた。 「体力も必要だ。メンタルもタフでないと、この変化の日々には耐えられない。賢くしぶとく強固な精神の持ち主に変わらなければ。」 そういう人間を探すのはそう大変ではない。世の中の勝者から選べば良い。だが、その人に成る頃には、世の中には更に有能な人間に溢れ、今の勝者など即座に敗者に変わる。有能な本人は賢く先見性もあるため、この勝負に勝ち続ける変化を繰り返すだろう。     
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